躁鬱のこと

北杜夫って作家さんがいて
高校時代のぼくのバイブル
『あくびノート』
高一の時の現代国語の教科書にあって
宇宙に飛ばされた気がして
すぐ本屋に行って買った


彼は躁鬱病
その精神状態を巧みに使い分けて
小説を書いていたから
まったく趣向の違う小説がある
鬱で書かれた『楡家の人々』は
下巻でやめた


19歳の頃
鬱の心地よさみたいなのがあって
明るいものに背を向けて
失恋も快感ってくらい繰り返してた
そんなこんなで今があって
早いうちにいろいろ経験しておくのは
お得な人生かもなって
今では思う


いま精神がどん底なんだけど
鬱ってわけじゃなくて
つま先で水中の底の泥を探っている状態


もはや
『あくびノート』を
読み返す必要もなくて
ずいぶん楽な人生を送らせてもらったことに
感謝しつつ
つま先で泥の底を蹴るタイミングをはかっている