今ない何かを埋めて行く

じっとそこに生え
人生を受け入れていく木のように
覚悟は無いから
ひとは動きだす


腹がへったら動きだす
たっぷり寝たら動きだす


15の数の並んだ4×4のスペース
ひとつスペースを作って動き出す


何も変わりはしないと言われても
自分の並びたい順番に移動する


起きる直前 こんな夢を見た
ぼくは取材番組の中にいた


確か東京であろう駅前の居酒屋
明るい店舗の中をご主人が
テーブルごとに挨拶してまわっている


外はしらじらと夜が明けはじめている
ふと見るとご主人が外に向かって
深々とお辞儀した


ぼくは このお店に興味がわいた


店内の客が帰るとご主人は
掃除をすますと
店内を改装しはじめる
あっというまにカフェになった
おいしそうなケーキが並んでいる


ぼくはぞんざいな質問をした
「寝ないんですか?」
急に不機嫌そうな顔になるご主人


と若いパティシエが階段を降りてきた
「賞とれなかったっす」
「あれ おいしかったのにねえ」
ケーキの大会で賞を逃したらしい


ご主人が一人になったとき訊いてみる
「従業員さん どうですか?」
「実力はAだけどCだねえ」


ぼくは従業員を追いかけた
「この店 働いてみてどう?」
従業員は明るく答えた
「Cっすねえ」


ここで目が覚めた
あまりに鮮明なので書き留める


知らない街 知らない人たちの話