無の体感

失礼かもしれないが
先立つものは興味だ
娘が中学時代体験した無なるものを
父も体験したいと思おてすなり


探りに来たと思われては心外なので
深呼吸して待つ


楽しく生きているつもりで
なんの不安もないのだが
こんな生き方でいいのでしょうか
というコトバの矛盾に反応していただく


眉間のシワを指摘され
芯にある緊張を見つけられる
稲福先生の左眼を"見る見る"しながら
右手人さし指を持たれながら
意識を自分から地球
そして宇宙まで引き上げることを
指南される


しかし自分の意識は自分のままだ
先生と自分の心の障壁が取れない

見ている先生のまなこが変化しはじめる
最後にはブラックのカラーコンタクトになって
はずれてしまうのではと思うほど


次第に脳は先生の目を見ることに
集中してしまっていた
先生はこちらを見ない


それから暗室に行き横になる
やさしい声をかけられたのち
ひとりにされ無の体感を繰り返す


30分して再度
先生の左まなこを"見る見る"
あーらふしぎ
先生と自分との心の障壁がとれている


「何か訊きたいことは?」
のご質問に
「何もありません」
と答えると
「それが無だよ」


脳が帰ってきたので
「眉間のシワはどうすればとれるのでしょうか?」
と尋ねますと
「もう ないよ」