O村さん4

「展示会場で
みんな O村さんの作品ばかり さわったりなでたりしますよね」
と言うと
「だって ぼくの彫る石は元々触られ上手だもん」
「えっ? じゃ どうやってそんな石を選ぶんですか?」
「ああ 選ぶとか言っても ぼくは海岸とか石のたくさんあるところで
選んだりしないよ
第一 “選ぶ”なんて 偉そうじゃない
そんなことできないよ
けつまずいたり 出会ったりするんだ」


それから
「おじさんの選ぶ石はダメだね 危ない
どうして そんな石選ぶのかなってくらい
危ない石を選んでくる
墓石だったり 塚のささえに使っていた石とかが
とても いいものに見えるみたい
ぼくは すぐ分かるんだ
どうも おじさんは欲が深くてダメみたい
その反対に女性や子供が触りたがる石は大丈夫
彼らは危ないものには近づこうともしないからね
特に妊婦さんのは確かだよ」


O村さんは公園にあっ彫りかけた記念石を隠してから
10年間 ノウハウを習得しながら
「彫って 彫って」という声を待ち続けた