S浜学園3

絵の教室は
13時40分に大人の生徒さんたちが到着


字の好きな女の子は
山という字を隙間なく描き続ける
そのスピードがすごいのだ
ぼくの感覚にはない遅さ
しかも毎回 書き順が続く
ながめていると
まわりの音や気やいろいろなものが
吸収されていくような気がする


彼女の元気だったころの作品を見せてもらったが
4と5のたくさん描いてあるものが重厚で力強かった
いまはあの線は描けないそうだ
2階まであがってくるのに いまではかなり時間がかかる


他の人はO村さんが用意している写真をモデルに描いていく
見事に似せて描く青年がいるのだが
何筆か描くたびにジャンプしてみせる
その体から発する躍動感に反して画はものすごく緻密なのだ
彼の仕上がりは次回までおあずけ


賞をとった男性の画は
どことなくユーモアがある
今回はパティシエと女性がケーキを持っている写真
皿にはケーキがな買ったりするのだが
写真と並べるとくすっと笑ってしまう
ぜひ そのお店のひとにあげたらいいな
お客さんが増えそう


あと3名いらっしゃったのだが
その写真が
なんでそう見えるの?
の世界
どれも個性的で味がある


いつもは2回、3回とかかるそうなのだが
見知らぬ男がいるせいか
筆の進みが早く
緻密画のひとりをのぞいて
あっと言う間に完成〜♪


O村さんが言ってた
ああ描いたほうがいい
こう描いたほうがいい
ってすぐ人は言うでしょ
でも そういうのって よくない
彼らは親にほめられたくてしかたない
そのこと自体はいいんだけど
うまく描こう うまく描こう
そればっかりになってしまう
だんだん おもしろくない絵になって
そして自分自身もつまらなくなって
やめてしまう


続いて小学生の子供たち登場
元気だ
なかなか集中しなくて
ものすごく時間がかかると聞いていたのだが
ものの20分で全員完成


その絵というのが
少しも具象形のないもの
クレヨンでまるみたいなものを
ぐちょぐちょ〜っと描く
ぼくには見えないが
バイキンマンだったり
ドキンちゃんだったりするわけだ


O村さんは
「具象形を早く描かせたいと思うじゃないですか
親は特にそうなんです
子供の成長を早く見たい
早く見たいと思っているから


だけど 絵には
この時代が大切なんです
具象形が描けるようになるのは
あっという間
指導すれば すぐに描けるようになる
でも そうすると こういう絵は描けなくなるんです」


うん このもどかしさ
なんとかしたくなるのが人間ってもんです
早さを求めるこの時代に
どの親も子供の早い成長を望むものだと思う
んだけど 早さのせいで
とても大切なものを見失っている気がします


で O村さんは
ボランティアで教えているんです
絵の道具なども
いろんなところに声をかけて集めたそうな


ぼくみたいに普通に汚れている人間には
O村さんのような人間は
妖精のように思えます