『ありがとう星人』11

けっこう高い所まで来ました
昼間でも涼しいくらいです
でも水場はありません
おじさんは寒いのは苦手なようで
歩くスピードが遅くなりました
どちらかと言うと
ぼくのほうが寒さに強いみたいで
朝になっても
太陽が昇ってしばらくたたないとおじさんは起きません
寒いと体も伸ばせなくなって夜の移動もできなくなりました
おじさんもぼくみたいに何にも食べなくても生きていけるようなのですが
やっぱりぼくみたいに水がないときついみたいです


夕方になりました
きょうも水場へはたどり着きませんでした
太陽が沈むとおじさんは岩の上でじっと動かなくなりました
ぼくは心配になってきました
「おじさん だいじょうぶだろうか?
このまま死んだりしないよね」
しばらくすると おじさんは大きく背伸びをしました
そして どんどんどんどん
顔を大きくしていきました
ときどき 強い風が吹くのですが
おじさんは 踏ん張りながら
どんどんどんどん
顔を大きくしていきます
とてもひらべったくて
うちわみたいな顔になりました