『ありがとう星人』8

その日の午後でした
ロバをひいた少年が向こうからやってきました
すれちがいざまに少年は
おじさんの持っていた羊の皮に入った水を取り上げたんです
「へへっ こいつはいただくぜ のどがカラカラだったんだ ありがとよ」
てっきり取り返しに行くのかと思ってたら
「ありがとう」
とおじさんは言ったんです
「なんだこいつ 頭がおかしいらしいや へへっ」
少年はグビグビっと大切な水を一滴のこらず飲み干すと
「んじゃ これ返すわ」
って羊の皮を投げてよこしました
すると またおじさんは うれしそうに
「ありがとう」
って言いました
少年は
「バーカ」
と言って去っていきました


おじさんは またてくてくと歩きます
らくだの男の人が言ってた水のある山は
まだ見えてきません
そうして夜になったので休みました
夜になると少しだけ夜露がおりて
ぼくは少し楽になります


朝になりました
朝日が山のかげから顔を出しています
岩が切り立ったような山です
ああ あれがらくだの男の人が言ってた山だな
あんな所に水があるのかなと考えてるうちに
あれ?
きのうは山なんかぜんぜん見えなかったのにと
ぼくは思いました